栗村博士の発明品(第2話) | ★デイリー・ロク★
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栗村博士の発明品(第2話)

「ということは   
男は下唇を咬み、
やや間をおいて
「違法ではないということですね」
と栗村博士の顔を上目遣いに見た。

「さっきから何度も言うておるじゃろう。
 ぜったいに検出されん成分じゃと」
博士はソファにふんぞり返ったまま答えた。

「いえね」
と男は笑い、
「わが社としては、
 コンプライアンスをおろそかにできない
 わけでして」

「ふん、それを裏返すと、
 法にさえ触れなければ何をしたって
 かまわんと思っているということだ」

「ハハハ、言いますねー、博士」
と笑ったあと、男は急に真顔になって
「で、見返りは」

「金などいらん」

「え?」

「株を少し融通してくれればな」

「なるほど」


そんな会話が某所で交わされた数ヶ月後、
B社の牛乳が
ぐんぐん売上を伸ばしていることが
新聞紙上で話題になった。

「本当においしい牛乳は、
 味のよさばかりじゃなく
 明日も飲みたくなるかどうか。
 わが社はそれを追求しました」
と、B社はアナウンスした。

しかし一方で
「牛乳の中に常習性のある成分が
 混入されているのでは」
という噂も絶えなかった。

消費者庁が極秘裏に調査を行ったが
疑わしい点は何も出なかった。


儲かったB社は事業拡大を図り、
全国各地に新工場を建て従業員を雇用し、
乳製品や清涼飲料の新開発を行った。

それらはまたたく間に軌道に乗り、
B社は社屋を改築し、
それまでダサかったロゴマークも一新、
従業員に特別ボーナスも出した。

しかし
その頃から急激に売上が落ち始めた。

「どうしたことでしょう」
と、担当者が栗村博士の研究室へ
相談に訪れた。

「すまんな。他の発明に忙しくて、
 そんなことになっていようとは
 全然知らんかった」
と、博士は言い訳をした。

「やり方は何も変えていないのですが…」
担当者が工場のシステムや
例の薬剤の混入方法を説明したが、
さすがの博士にも
売れなくなった原因はわからなかった。


担当者が帰ったあと、
博士は急に思いついたように
「ちょっとコンビニに行って
 B社の牛乳を買ってきてくれんか」
と、助手のレイコに伝えた。

その牛乳のパッケージを一目見て、
博士は
「うーむ」
と唸った。

「どうかなさいました?」
とレイコが尋ねた。

「あいつらには秘密にしておいたのだが、
 実はあの成分は、
 麻薬のようなものではなかったのじゃ」

「常習性のある成分では
 なかったのですか」

「ワシはそんなものは作らん。
 体内に入ると
 脳がB社のロゴマークに反応するように
 なっておっただけじゃ」

「まあ」

「やつらロゴマークを
 勝手に変えおってからに」

「脳が
 新しいロゴマークに反応するようには
 できないのですか」

「無理じゃ。
 以前のように
 単色で単純な形ならともかく、
 こんな多色刷りで複雑な形状では
 どうにもならん」

「まあ」


   そうじゃ。株を早いとこ売らんと」
博士は焦ったように言った。

「レイコ君、証券会社に電話を入れてくれ。
 すぐ株を売る。
 そして、金が入ったら…」

「はい」

「家を買う」

「は?」

「二人の新居じゃ」

「はァ?」

「レイコ君、ワシと
 けっ、けっ、けっ…」

そのとき、
研究室の電話がけたたましく鳴った。

電話に出たレイコが
博士を振り向いて言った。

「B社が
 会社更生法の適用を申請したそうですわ」


栗村博士の春はまだ遠い。


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